研究部門

埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介072720

Am J Respir Crit Care Med. 2020. Online ahead of print.

Targeting p16(INK4a) Promotes Lipofibroblasts and Alveolar Regeneration After Early Life Injury

論理的根拠:正常な肺を修復し、慢性成人期肺疾患の発症を防ぐためには、肺傷害後、内因性の肺の再生を促進することが重要である。
目的:細胞周期阻害剤であるp16INK4aが、肺胞発達の停止を特徴とし、成人期の後遺症を生じさせる新生児気管支肺異形成症(bronchopulmonary dysplasia、BPD)後の肺再生を抑制するかどうかを検証する。
方法:われわれは、p16INK4aノックアウトおよびp16INK4a ATTACトランスジェニックマウスを出生後高濃度酸素暴露し、p16INK4aノックアウトマウスの肺を摘出した。われわれは、早産新生児と7-15歳のBPD生存児の血中単核細胞中およびBPD患者肺中のp16INK4aを計測した。
結果:マウスでは高濃度酸素誘導BPD後、P16INK4a値は肺線維芽細胞内で増加し、成獣期まで持続した。P16INK4a欠損は新生仔マウスの高濃度酸素障害を防がなかったが、成獣期までの肺構造回復を促進させた。 高濃度酸素肺障害が生じた後、p16INK4a陽性細胞の治療的除去は成獣期までに正常肺を回復させた。p16INK4a欠損は中性脂肪合成を増加させ、幹細胞ニッチ内で脂肪線維芽細胞と肺胞2型細胞(alveolar type 2 cell、AT2)の発達を促進させた。さらに、脂肪線維芽細胞は肺胞球へのAT2細胞自己再生を支持した。高濃度酸素後のPPARγアゴニスト投与もまた脂肪線維芽細胞とAT2数を増加させ、高濃度酸素暴露マウスの肺胞構造を回復させた。肺摘出後、p16INK4a欠損は再度、対側肺の脂肪線維芽細胞とAT2数を増加させた。最後に、われわれは、早産児の血液および肺でp16INK4a mRNAの過剰発現を認め、それは年齢の高いBPD生存者の血液中でも持続して見られた。
結論:これらのデータにより、小児期から成人期への肺胞再生を刺激するには、p16INK4aを標的にすることと脂肪線維芽細胞発達を促進させることの必要性があることが示された。

https://www.atsjournals.org/doi/10.1164/rccm.201908-1573OC