埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介121719
Clin
Infect Dis. 2018. [Epub ahead of print]
Short-term
Pasteurization of Breast Milk to Prevent Postnatal Cytomegalovirus Transmission
in Very Preterm Infants
背景:母乳を介して出生後に獲得するサイトメガロウイルス(postnatally acquired cytomegalovirus、pCMV)感染は重症疾患や死さえ生じさせる可能性があるが、母乳は早産児にとって有益である。それゆえ、その移行を回避するための有効な手段が必要である。
目的:早産児の母乳を介したCMV移行回避における短時間低温殺菌(62°C、5秒間)の有効性を評価した。
デザイン:2010年6月から2012年1月に登録された児を用いた前方視的介入二中心コホート研究。1995年から1998年のテュービンゲン新生児集中治療室(neonatal intensive care unit、NICU)からのコホートをヒストリカルコントロールとした。CMV移行のリスク累積時間を指標として、CMV移行の差を比較した。
設定:2つのドイツ3次NICU
参加者:出生体重1500 g未満または在胎期間32週未満でCMV IgG陽性母体69人から出生した早産児87人とヒストリカルコントロール83人が登録された。
介入:日齢4から退院まで母乳サンプルを短時間低温殺菌した。
主な評価項目:主要評価項目は尿中PCRと短時間微生物培養で評価した退院時CMVの状況とした。
結果:87人中2人(2.3%)の対象児で出生後のCMV移行を生じた。これを83人中17人(20.5%)のコントロールと比較した。感染のリスク全時間はコントロールの10.0年に対して9.6年であり、発症率はそれぞれ1.70/年(95% CI 0.99-2.72/年)に対して0.21/年(95% CI 0.03-0.75/年)だった。コックス比例ハザードモデルを用いると、コントロール対対象児のリスク比は8.3(95% CI 2.4-52.4)だった(P=.0003)。
結論:NICUにおいて短時間低温殺菌は母乳を介したpCMV感染の発症率を有意に減少させた。