研究部門

埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介022120

Am J Perinatol. 2020 Feb 18. [Epub ahead of print]

 

Breast Milk and Saliva Lactoferrin Levels and Postnatal Cytomegalovirus Infection

 

目的:極低出生体重児はNICUにおいて致死的な感染症のリスクにある。母乳は感染に対して防御的に働くが、母乳中に移行するサイトメガロウイルス(cytomegalovirusCMV)感染のリスクを生じさせる。ラクトフェリンは、CMVに対して強力な中和活性を持つ母乳および唾液中蛋白質である。

研究デザイン:VLBWNICUで児に与えた母乳、授乳母体を対象とし、3ヵ月間または退院までフォローした。母乳と児の唾液サンプルを2週間ごとに採取した。母体CMVの状況は母乳の結果をもとに決定した。CMVは定量PCRで、ラクトフェリンはELISA法で測定した。

結果:in vitro中和分析では、CMVに対する精製ヒト・ラクトフェリンのIC902.08 ng/mLだった。ウシ・ラクトフェリンはより強力で、IC9010倍以上高かった。ラクトフェリンはすべての母乳(中央値:3.3 × 106 ng/mL)と唾液(中央値:84.4 ng/swab)サンプルで検出された。母乳中CMV量の中央値は893コピー/mLだった。母乳中ラクトフェリン濃度とCMV量に相関は認めなかった。5人の児が出生後CMVに感染した。唾液または母乳中ラクトフェリン濃度は、母児のペアおよび出生後CMV感染で差は認めなかった。

結論:ラクトフェリンはin vitroCMVを中和させるが、母乳および唾液中濃度はin vivoで効果的な中和作用を示すには低すぎるようである。


https://www.thieme-connect.com/products/ejournals/abstract/10.1055/s-0040-1701609