埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介022420
Nutrients.
2019 May 24;11(5). pii: E1169.
Innovative
Techniques of Processing Human Milk to Preserve Key Components
母乳は乳児が必要とする栄養素をすべて含んでいるだけでなく、人工乳栄養児で欠乏症が生じることでその調節的役割が確認された成分の元でもある。母乳栄養は新生児集中治療室(neonatal intensive care unit、NICU)において、未熟児にとって特に重要である。母乳栄養が不可能な場合や母親の母乳量が不十分な場合、最も好まれるのは低温殺菌されたドナー・ミルクである。母乳バンク数が近年増加しているが、それらの技術的基盤は発達過程にある。ホルダー低温殺菌(62.5℃、30分)として知られる低温かつ長時間の熱処理が、母乳処理で最も良く知られている方法であり、ドナー・ミルクの質に対する影響はよく報告されている。ホルダー低温殺菌は、細菌の芽胞形成およびヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus、HIV)、ヘルペス、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)等ほとんどのウイルスを破壊する。主栄養素は比較的正常に保たれるが、種々の有益な成分は完全に破壊されるか、障害される。酵素や免疫細胞は最も熱感受性のある分子である。熱で低温殺菌された母乳の殺菌能は無処理母乳よりも低い。本研究の目的は、保存段階を改善させるために現在試されている方法について総合的に比較することである。母乳処理の革新的技術は、母乳による感染のリスクを最小限にし、この複雑な生物学的液体の生物活性をホルダー法より良好に保つべきである。本論文では、有望な低温殺菌温度(72℃-75℃)と数少ない非加熱処理(高圧処理、マイクロ波照射)について議論する。本レビューでは、ドナー・ミルクの安全性と質を改善しようと検討されている母乳保存法について概説する。