研究部門

埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介030320①

Expert Rev Anti Infect Ther. 2017 May;15(5):417-419.

 

Encouraging postnatal cytomegalovirus (CMV) screening: the time is NOW for universal screening! ①

 

先天性サイトメガロウイルス(cytomegalovirusCMV)感染は米国で毎年約20,000-40,000人、世界中で100万人以上の新生児に影響を及ぼす大きな健康問題である。胎児期に獲得するCMVは、小児期に続く神経学的障害や認知障害の主な要因であると同様、感音性難聴(sensorineural hearing lossSNHL)の最も高頻度の非遺伝的要因である。米国単独で40億もの年間コストが見込まれており、先天性CMV感染に対する医療負担および社会的費用と影響を受ける家族に対する個人負担について対応しなければならないし、われわれは今、十二分に行うことができる!

 

 近年、せいぜい臨床的に明らかな先天性CMV感染の新生児、つまり在胎期間に比して小さい(small for gestational ageSGA)児、点状出血・血小板減少・黄疸・直接高ビリルビン血症・肝脾腫・小頭症のような徴候を有する児、だけが同定されている。しかし、これらのいわゆる『症候性』の児はCMV感染新生児のたった10-15%に当たるだけである!確かに、臨床的・検査所見的・神経画像的異常を示すこれらの児は、長期的後遺症を示すかもしれない。彼ら・彼女らの約50%SNHLがあるか発症し、リスクは一生のようだが、ほとんどが3歳以内で生じる。さらに、多くがIQ70未満の知能障害や他の神経発達障害を示す。神経学的予後不良を予測する生後早期の所見には、小頭症、脈絡網膜炎、皮質形成異常や脳回異常等の神経細胞移動障害を示す異常神経画像がある。医療従事者にあらかじめ発見されるべきであるため、これら『症候性』の児は新生児CMVスクリーニングを行う必要がない-しかし実際、多くは発見されない!SGAや血小板減少、CMV感染の可能性のある他の徴候は高頻度で、『培養陰性敗血症』または妊娠高血圧腎症または違法薬物使用等の母体暴露のせいであり、CMV検査は残念ながら決して行われない。医療従事者間で先天性CMV感染の認知度は比較的低く、CMVが鑑別診断の一部となり、適時に適切な検査が行われるためには、先天性CMV感染の様々な徴候に焦点を当てた教育プログラムが必要である。(続く)


https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14787210.2017.1303377