埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介030620②
Expert
Rev Anti Infect Ther. 2017 May;15(5):417-419.
Encouraging
postnatal cytomegalovirus (CMV) screening: the time is NOW for universal
screening!
(前回の続き)
しかし重篤な後遺症に至ったとしても、感染は通常出生時に臨床的には不顕性のため、CMV感染新生児の多くは診断されていない。いわゆる『無症候性』新生児の約10%がSNHLを発症し、5%が神経発達障害、2%が脈絡網膜炎を発症する。これら遅発性の徴候が小児期に明らかになった時には、後ろ向きに先天性CMV感染を診断することは事実上不可能である。先天性感染は生後2-3週間でのウイルス検出が必須である。生後3週間以降に児の培養またはPCRでCMVが明らかになった場合、①先天性感染からの持続したウイルス分泌、②分娩時感染、③水平感染(例:託児所通園、同胞)または母乳哺乳による出生後感染、を示している可能性があるため、正確な感染経路を確定することは不可能ではないが極めて困難である。従って、新生児CMVスクリーニングが必要なのである!
ほとんどの国々のすべての新生児には、新生児スクリーニング事業で濾紙に採った乾燥血液(dried blood spots、DBS)があるため、CMV DNA検出にこれらの検体を使用することがかなり注目されてきた。2000年、Barbiらは、生後1週に採取したDBSを回収し、15日から4年後にCMV DNAをネステッドPCR法で検出し、それらが使用できる可能性のあることを示した。生後3週未満にCMV培養陽性だった児72人のうち、全員がCMV DNA PCR DBS陽性だった。しかし、最近では、新生児20,448人のCMV DNA DBSスクリーニングを行った最も大規模な前向き研究において、Boppanaらは、先天性CMV感染新生児の検出に対してDBSの感度はたった28.3%だが特異度は99.9%であることを示した。同時にBoppanaらは、唾液スワブを用いたCMVスクリーニングは感度、特異度それぞれ97.4-100%、99.9%であったとすばらしい結果を示した。他の研究者らは尿や臍帯を先天性CMVスクリーニングに用いて一定の成功を収めているが、唾液スワブの採取の容易さから、現在この方法がルーチンの新生児スクリーニングとして好まれている。母乳哺乳後の唾液採取は実際の感染よりむしろ母乳中CMVのコンタミを検出している可能性があるため、CMV唾液スクリーニング陽性は尿CMV PCRまたは培養で確認すべきである。さらに、もし先天性CMV感染診断の疑いがあれば、尿CMV検査を迅速に行うことで、二段階法を用いた診断の遅れを避けることができる。(続く)
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14787210.2017.1303377