研究部門

埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介031320③

Expert Rev Anti Infect Ther. 2017 May;15(5):417-419.

 

Encouraging postnatal cytomegalovirus (CMV) screening: the time is NOW for universal screening!


(前回の続き)

では、どのようにスクリーニングを行うべきだろうか?先天性CMV感染の新生児を適切な時期に診断するために、標的型(targeted)スクリーニングと普遍型(universal)スクリーニングという2つの方法が提案・推奨されている。標的型CMVスクリーニングは、聴覚スクリーニングをパスしなかった新生児の中からCMV感染を診断するための方法として、近年最先端をいっていた。2008年、Stehelらは、聴覚スクリーニング要再検となった新生児の6%が先天感染であり、その75%が聴覚スクリーニング異常のみに基づいて診断されたため、標的型スクリーニングは実行可能かつ重要であることを示した。しかし、より最近では、Fowlerらが、このような標的型の手法は出生時のCMV関連SNHLの児の大半を診断するが、後期乳児期や小児期にCMV関連難聴を発症する児の43%相当を診断することができないことを報告した。標的型には他の問題も存在する。聴覚スクリーニングは、在胎期間34週未満の未熟児や病的成熟児では生後3週間以内に行うことができない可能性がある。これらの児が退院時の聴覚スクリーニングで要検査となった時、CMV陽性の以降の解釈に問題が出てくる。保存DBSからのCMV DNA検出が提唱されてきたが、感度は不十分であり、検査は通常研究室のみで行われる。さらに、多くの州では一定期間経過するとDBSは破棄されるか、ルーチンの新生児スクリーニング後に州がDBSを保存することを両親が許可しなかった。現在、ユタ州とコネチカット州では聴覚スクリーニング要検査となった新生児のCMVテストが義務付けられている一方で、イリノイ州では両親にCMVが聴覚スクリーニング異常の原因の可能性があると知らせ、退院前に児のCMV検査の機会を提供する必要がある。 

 

標的型では、SGA、肝脾腫、血小板減少、脳室周囲石灰化、レンズ核線条体血管症等の先天性CMV感染のあらゆる臨床的・検査的・放射線学的徴候を示す新生児全てに対するCMV検査も行われるべきである。さらに、ヒト免疫不全ウイルスに感染した母体から出生した児の2-7%が先天性CMV感染を発症するため、これも標的型スクリーニングプログラムの一部とすべきである。

 

2017年、標的型CMVスクリーニングは矛盾した表現であることが明らかになっている!臨床家は患者の臨床的・検査的異常の原因を知ろうとするべきであり、もし新生児が聴覚スクリーニング要検査となるかCMVが鑑別に挙がる場合は、CMVの適切な検査が行われるべきである。標的型スクリーニングでは、遅発性難聴や神経発達障害を発症するリスクのあるCMV感染新生児のかなりの数を発見できないという問題は変わっていない。(続く)


https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14787210.2017.1303377