研究部門

埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介032420

Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2020 Mar 18. [Epub ahead of print]

 

Lung developmental arrest caused by PDGF-A deletion: consequences for the adult mouse lung

 

PDGF-Aはマウスの肺発達で鍵となる因子の一つである。マウスでは、その発現は肺胞の二次中隔化に必須とされ、遺伝子欠損は肺胞気道スペースの異常拡大を生じさせる。ヒトでは、同様の表現型が、未熟児に発症し、成人期にも長期間持続合併する気管支肺異形成症(bronchopulmonary dysplasiaBPD)の特徴とされる。現在のところ、肺発達停止に対する成人の影響に関する知見は少ない。これはBPD生存者のフォローアップ研究がほとんどないのと、成人個人にとって、この早期年齢発症疾患の予後を予測できるよい実験モデルがないことに起因する。本研究では、われわれは、成獣マウスにおける肺発達障害の影響を解析するため、常時肺特異的Pdgfa欠損マウスモデルを使用した。われわれは、周産期にBPD様形態の肺を示した成熟マウスにおいて、肺形態学・生理学・細胞含量・ECM組成・プロテオミクスデータを解析した。組織学的および生理学的解析では、ともに肺胞気道スペースが成人期まで拡大が続いていることを示し、欠損マウスでは肺コンプライアンスが高く、肺容量が大きかった。それにもかかわらず、細胞・ECM・蛋白質含量は、欠損マウスとコントロールマウスを比較しても差はないかあっても小さかった。以上、われわれの結果から、Pdgfa欠損誘導肺発達停止は形態学的および機能的レベルで成獣肺に影響することが示された。さらに、これらのマウスはBPD様表現型を持ったまま成獣に到達することができ、疾患の病態生理学的進行や可能性のある再生療法についての研究を行うための強力なモデルとなる。


https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/ajplung.00295.2019