研究部門

埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介041020

Cells. 2020 Apr 2;9(4). pii: E859.

 

Failure to Down-Regulate miR-154 Expression in Early Postnatal Mouse Lung Epithelium Suppresses Alveologenesis, with Changes in Tgf-β Signaling Similar to those Induced by Exposure to Hyperoxia

 

背景:気管支肺異形成症(bronchopulmonary dysplasiaBPD)は、肺胞の単純化を特徴とする早産児肺疾患である。マイクロRNAmicroRNAmiR)は肺内で多くの生物学的・病理学的過程に関与していることが知られている。BPDではいくつものmiRの発現変化が報告されているが、原因的役割に関してはよく分かっていない。

結果:われわれは、miR-154発現レベルが肺発達中に上昇し、出生後減少することを示した。さらに、高濃度酸素暴露は肺胞2型細胞(alveolar type 2 cellsAT2)のmiR-154高レベルを維持した。われわれは、AT2細胞内のmiR-154発現減少が正常肺胞発生に必須であるという仮説を立てた。この仮説を検証するために、われわれはドキシサイクリンによりmiR-154過剰発現を生じさせる新規トランスジェニックマウスを作製した。ルームエア条件下における出生後の遠位肺上皮内のmiR-154発現維持は、高濃度酸素により生じる肺胞発生不全を再現するのに十分だった。プルダウン解析を用いて、われわれはmiR-154の重要な下流標的分子としてカベオリン1を同定した。カベオリン1蛋白はmiR-154過剰発現に反応してダウンレギュレートした。これはSmad3Tgf-ßシグナルのリン酸化増加と関連した。われわれは、miR-154が過剰発現したAT2細胞はAT2マーカー発現減少とAT1マーカー発現増加を示すことを明らかにした。

結論:われわれの結果により、出生後の肺におけるmiR-154ダウンレギュレーションは、正常肺胞発達プログラムを誘導する重要な生理学的スイッチとして機能し、一方反対にmiR-154のダウンレギュレート失敗は肺胞化を抑制し、肺胞の単純化といった臨床的によく見られる表現型を生じさせる可能性があることが示唆された。


https://www.mdpi.com/2073-4409/9/4/859