研究部門

埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介052620

Pediatr Res. 2020. Online ahead of print.

 

Characterization of the innate immune response in a novel murine model mimicking bronchopulmonary dysplasia

 

背景:未熟児で最も頻度の高い合併症である気管支肺異形成症(bronchopulmonary dysplasiaBPD)は、酸素や炎症等、肺発達を障害する種々の因子から生じる。高濃度酸素は新生仔齧歯類での疾患類似性のため使用されてきた。全身性炎症を誘導する第二の刺激を使用することが、BPDの炎症の側面をより類似させるための追加法として提案されてきた。今回われわれは、自然免疫反応の詳細な特徴とともに、新規2刺激(2HITBPDモデルを報告し、このモデルは、免疫調整物質を用いた治療の機序に関する研究を可能にするだろう。

方法:C57BL/6Nマウスに対して、日齢1785%酸素を暴露し、大腸菌LPSを生後(日齢3)接種した。様々なタイムポイントで、肺内と全身レベルでの免疫活性をFACSおよび遺伝子・蛋白発現を用いて解析した。

結果:2HITマウスは肺胞数を減少させ、肺コンプライアンスを増加させ、右室を拡大させた。一過性炎症性サイトカイン反応を局所および全身性に認めた。成熟肺胞マクロファージ数とともに、2型抗炎症性サイトカイン発現が肺で減少した。同時に、Siglec-F中間マクロファージ集団が出現した。

結論:本研究では、2HITモデルの長期的解析を行い、肺内の2型サイトカイン環境の障害と肺胞マクロファージ・プロファイルの変化が示唆された。

インパクト:われわれは、出生後のLPSおよび高濃度酸素暴露を用いた新しい2HITマウスBPDモデルを確立し、このモデル使用により、免疫調整物質を用いた新規治療法の機序に関する研究が可能になるだろう。本研究は、出生後のLPSおよび高濃度酸素暴露を用いた実験的BPDの標準化マウスモデルにおける自然免疫反応の発達を示し、肺傷害およびその回復に関する詳細な特徴を報告した初めての報告である。2HITモデルは炎症と肺発達障害との相互関係を理解するのに役立ち、短期間かつより安定した方法で新規治療法のテストを可能にするだろう。

 

https://www.nature.com/articles/s41390-020-0967-6