埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介061120
Int J
Mol Med. 2020. Online ahead of print.
Hyperoxia
reduces STX17 expression and inhibits the autophagic flux in alveolar type II
epithelial cells in newborn rats
酸素投与は未熟児にとって救命するための治療である。われわれは前回、高濃度酸素による気管支肺異形成症(bronchopulmonary dysplasia、BPD)新生仔ラットの肺組織では、オートファジーの流れが欠損していることを示したが、その機序については不明である。さらに、BPDの臨床経過を完全に変えるような革新的な治療法はほとんどない。本研究では、BPD新生仔ラットの肺胞II型(alveolar type II、AT-II)上皮細胞内のシンタキシン17(Syntaxin 17、STX17)(オートファゴソーム-リソソーム結合の必須タンパク)の発現について検討した。新生仔Sprague‑Dawleyラットを無作為に高濃度酸素(FiO2 0.8;モデル群)またはルームエア(FiO2 0.21;コントロール群)に暴露し、肺組織中のSTX17とオートファジー関連[Microtubule‑associated protein 1A/1B‑light chain 3B(LC3B)‑II、p62、lysosomal‑associated membrane protein 1]、アポトーシス関連[cleaved caspase3]のmRNAおよびタンパク発現を検証した。さらに、高濃度酸素条件下でオートファジーの薬理学的調節因子の有無でin vitro培養した初代AT-II細胞内での前述のタンパク発現レベルを測定した。透過電子顕微鏡により、日齢7にコントロール・ラットと比較してBPDラット肺では、AT-II細胞のアポトーシスとオートファゴソーム凝集が増加していることが明らかになった。STX17のmRNAとタンパク発現レベルは、BPDラットで早ければ日齢3に肺組織とAT-II細胞で減少し、一方LC3B‑II・p62・cleaved
caspase3は増加し、日齢7でピークに達した。このSTX17発現の早期減少と引き続いて生じるオートファジー・アポトーシス関連タンパクの発現増加は、in vitroで高濃度酸素暴露したAT-II細胞でも認められた。しかし、オートファジー誘導物質であるラパマイシンまたは塩化リチウムは、高濃度酸素によるSTX17減少を消失させ、部分的にオートファジーの流れを回復し、高濃度酸素暴露したAT-II細胞の生存率を増加させた。まとめると、今回の結果により、AT-II細胞内のSTX17発現は新生仔ラットのBPD早期に減少し、おそらくそれに引き続いて生じる高濃度酸素によるオートファジーの流れの遮断と関連していることが示された。
https://www.spandidos-publications.com/10.3892/ijmm.2020.4617