研究部門

埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介061820

Respir Res. 2020;21(1):140.

 

Caffeine prevents hyperoxia-induced lung injury in neonatal mice through NLRP3 inflammasome and NF-κB pathway

 

背景:気管支肺異形成症(bronchopulmonary dysplasiaBPD)は未熟児の頻度の高い肺疾患であり、高濃度酸素が主な原因である。高濃度酸素性肺傷害動物モデルでは、肺胞の単純化と炎症細胞の浸潤が主な病態生理学的変化である。カフェインは未熟児無呼吸発作の治療に使用される薬剤である。カフェインの早期使用はBPDの発症と重症度を抑制しうるが、一方その機序については明らかになっていない。本研究の目的は、高濃度酸素性肺傷害新生仔マウスにおける炎症と肺発達に対するカフェインの有効性を評価し、考えられる機序を探索することである。

方法:新生仔マウスに対する14日間の75%酸素暴露をBPDモデルとした。カフェインを1 g/Lの投与量で母獣マウスの飲水に加えた。市販キットで血清カフェイン濃度と肺内酸化ストレスを測定した。アデノシン2A受容体(Adenosine 2A receptorA2AR)発現と肺炎症を、免疫組織化学とウエスタンブロットで検討した。アポトーシスとサーファクタント蛋白-Csurfactant protein-CSFTPC)値を免疫蛍光法で解析した。インフラマソームとNF-κBパスウェイ蛋白をウエスタンブロットで評価した。

結果:われわれは、現在の投与量での血漿中カフェイン濃度は、マウス肺でA2AR蛋白発現を有意に減少させることを明らかにした。カフェイン療法は、高濃度酸素誘導肺傷害マウスにおいて、酸化ストレスを減少させ、体重増加を回復させ、肺胞発達を促進させ、炎症浸潤および肺傷害を有意に軽減させた。さらに、カフェインは肺組織中、特にII型肺胞上皮細胞内で、細胞のアポトーシスを減少させた。NLRP3インフラマソーム蛋白とNF-κBパスウェイは、カフェイン療法によって有意に阻害された。

結論:カフェイン療法は、NLRP3インフラマソームとNF-κBパスウェイを阻害することにより、高濃度酸素誘導マウス肺を酸化傷害から守ることができる。

 

https://respiratory-research.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12931-020-01403-2