研究部門

埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介070320

Am J Respir Crit Care Med. 2020. Online ahead of print.

 

Perinatal Hypoxia-Inducible Factor Stabilization Preserves Lung Alveolar and Vascular Growth in Experimental BPD

 

背景:胎盤機能不全を伴う胎内炎症は早産児のBPD発症の高リスクと強く関連する。出生前または出生後のHIFの増加が子宮内炎症後、肺の構造と機能を保護し、肺高血圧(pulmonary hypertensionPH)を防ぐかどうかについては議論が多い。

目的:出生前または出生後のプロリルハイドロキシラーゼ阻害剤(prolyl-hydroxylase inhibitorPHi)療法が、肺HIF発現を増加させ、胎内炎症によるCA誘導BPDラットモデルにおいて肺の発育と機能を保護し、PHを防ぐかどうかを検討した。

方法:妊娠20日、エンドトキシンを妊娠ラット羊水内(intra-amnioticIA)に投与し、妊娠22日に帝王切開で児を娩出した。選択的PHi薬であるジメチルオキサリルグリシン(dimethyloxalylglycineDMOG)またはGSK360AGSK)を妊娠20日に羊水腔内または出生後腹腔内に2週間投与した。形態学的解析とHIF-1aHIF-2a・血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factorVEGF)・血管内皮一酸化窒素合成酵素(endothelial nitric oxide synthaseeNOS)をウエスタンブロットでタンパク定量を行うため、胎盤と肺組織を出生時に採取した。日齢14に肺機能を評価し、組織はradial alveolar countsRAC)による肺胞化・肺血管密度(pulmonary vessel densityPVD)・右室肥大(right ventricular hypertrophyRVH)の評価のために採取した。

結果:出生前のPhi療法は子宮内ETX暴露後、肺の肺胞と血管の発育・肺機能を保護し、RVHを防いだ。出生前Phi投与はETX暴露後、肺のHIF-1aHIF-2aVEGFeNOS発現を著しく増加させた。

結論:HIFの増加は出生前ETX暴露後、肺の構造と機能を回復させ、RVHを防ぎ、胎盤構造も改善させた。われわれは、出生前または出生後のPhi療法は胎内感染によるBPDを予防するための新規治療戦略になりうると考えた。

 

https://www.atsjournals.org/doi/abs/10.1164/rccm.202003-0601OC