埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介070720
J
Interferon Cytokine Res. 2020 Jun;40(6):320-330.
Recombinant
Human Elafin Ameliorates Chronic Hyperoxia-Induced Lung Injury by Inhibiting
Nuclear Factor-Kappa B Signaling in Neonatal Mice
組換えヒト・エラフィンが新生児マウスにおける高濃度酸素誘導肺炎症を予防できるか検証し、nuclear factor-kappa B(NF-κB)シグナル経路に対するエラフィンの阻害作用の機序について検討することを、本研究の目的とした。新生仔C57BL/6Jマウスを1・7・14・21日間85%酸素に暴露した。次に、エラフィンを腹腔内注射で20日間毎日投与した。治療後、エラフィンで治療した高濃度酸素暴露新生仔マウスにおける炎症過程に関与する重要なマーカーとシグナル経路を探索するため、形態学的解析・定量リアルタイムPCR・TUNEL染色・ウエスタンブロットを行った。気管支肺異形成(bronchopulmonary dysplasia、BPD)新生仔マウスでは、高濃度酸素はBcl-2関連X蛋白の発現を増加させることによりアポトーシスを誘導し、IL-1β・IL-6・IL-8・TNF-αの発現レベルをアップレギュレートすることにより炎症を惹起した。さらに、高濃度酸素は肺組織でp65の核内移行を促進することによりNF-κBシグナル経路を活性化した。しかし、これらの変化すべてが、エラフィンによって少なくとも部分的に抑制または回復した。エラフィンは、高濃度酸素暴露新生仔マウスにおいて、アポトーシスを減少させ、炎症性サイトカインを抑制し、NF-κB p65の核内集積を改善させた。このことにより、この組換え蛋白がBPD治療の新規ターゲットとして利用される可能性があることが示された。