埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介082020
Am J
Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2020 Jul 22. Online ahead of print.
Neonatal
Therapy with PF543, a Sphingosine Kinase 1 Inhibitor, Ameliorates Hyperoxia-Induced
Airway Remodeling in a Murine Model of Bronchopulmonary Dysplasia
高濃度酸素(hyperoxia、HO)誘導肺障害は早産児の気管支肺異形成症(bronchopulmonary dysplasia、BPD)の一因となる。BPD生存児で見られる難治性喘鳴は気道リモデリング(airway remodeling、AWRM)と関連する。スフィンゴシン・キナーゼ1(sphingosine kinase 1、SPHK1))/スフィンゴシン-1-リン酸(Sphingosine-1-phosphate、S1P)シグナリングは、HO誘導新生仔BPDを促進させるが、後遺症であるAWRMにおける役割については分かっていない。われわれは、重症BPD児気管吸引液中のS1P濃度の増加を報告し、Sphk1欠損マウスはHO誘導BPDに対して防御的に働くことを早期に示した。新生仔HO暴露後のAWRM促進における SPHK1/S1Pの役割について、マウスモデルを用いて検討した。新生仔HO中の特異的SPHK1阻害剤、PF543を用いた治療は肺胞単純化を抑制し、その後、成獣マウスでのAWRMも減少させた。このことは、メサコリン静注に対する気道過敏性(airway hyperreactivity (AHR)減少と関連した。新生仔HO暴露は成獣マウス肺組織でのSPHK1発現増加と関連し、これは新生仔期でのPF543療法で減少した。これはHOに誘導された気道上皮内E-カドヘリン減少の改善を伴った。このことは、HOによる部分的上皮間葉移行(epithelial mesenchymal transition、EMT)の停止を示唆した。ヒト初代気道上皮細胞(human primary airway epithelial cells、HAEpCs)を使用したin vitro研究により、SPHK1阻害または欠損はHO誘導のE-カドヘリン減少を復元し、ミトコンドリア活性酸素種(mitochondrial reactive oxygen species、mtROS)の形成を減少させることが示された。MitoTempoを用いたmtROS阻害はHO誘導のHAEpCsの部分的EMTを軽減させた。これらの結果は、新生仔のHO誘導BPDと長期後遺症であるAWRMの予防におけるPF543の治療的役割を総合的に支持し、肺発達と肺機能を改善させる長期予防効果をもたらす。
https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/ajplung.00169.2020