研究部門

埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介082220

J Pathol. 2020 Aug 20. Online ahead of print.

 

Endothelial to mesenchymal transition during neonatal hyperoxia-induced pulmonary hypertension

 

未熟児の慢性肺疾患である気管支肺異形成症(bronchopulmonary dysplasiaBPD)は、他の因子の中でも機械的人工換気と高濃度酸素が原因となる。ほとんどのBPD生存児は酸素投与を中止できるが、肺高血圧や肺血管リモデリング等、成人期の心血管後遺症のエビデンスが多く示されている。上皮間葉転換(endothelial-mesenchymal transitionEndoMT)は、特発性肺動脈高血圧症における血管リモデリング誘導に重要な役割を果たす。齧歯類BPDモデルで既知のメディエーターである高濃度酸素暴露がEndoMTを生じさせ、血管リモデリングや肺高血圧に至るかどうかはいまだにはっきりしていない。われわれは、「新生児期高濃度酸素暴露がEndoMTを生じさせ、成人期の肺高血圧発症に至る」という仮説を立てた。この仮説を検証するために、新生仔マウスを高濃度酸素暴露させ、成獣期までルームエアで回復させた。新生児期高濃度酸素暴露は肺高血圧と同様、肺血管と右室のリモデリングを徐々に生じさせた。新生児期高濃度酸素暴露時に、雄マウスは雌マウスと比較して、肺高血圧を発症しやすかった。高濃度酸素は、新生仔マウスとヒト胎児ドナーから分離した培養肺微小血管内皮細胞(lung microvascular endothelial cellsLMVECs)内と同様に、マウス肺内でEndoMTを生じさせた。EndoMTは女性ドナーと比較して男性ドナーからの培養LMVECs内で増強した。初代マウスLMVECsを用いて、高濃度酸素暴露はSmad2Smad3両方のリン酸化を増加させたが、Smad7蛋白レベルを減少させた。選択的TGF-β阻害剤SB431542を用いた治療は、in vitroで高濃度酸素誘導EndoMTを阻害した。まとめると、われわれは、新生児期高濃度酸素暴露は、成人期に血管リモデリングと肺高血圧を生じさせることを示した。これは、EndoMT増加と関連した。この新規知見により、高濃度酸素誘導血管リモデリングの機序とEndoMTを標的としたBPD関連肺高血圧症の期待される予防法がもたらされた。

 

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/path.5534?af=R