研究部門

埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介082820

Metabolites. 2020 Aug 21;10(9):E340.

 

Hyperoxic Exposure Caused Lung Lipid Compositional Changes in Neonatal Mice

 

未熟児に対する酸素投与は肺発達を障害させ、気管支肺異形成症(bronchopulmonary dysplasiaBPD)を生じさせる可能性がある。出生後の肺発達過程において肺のステージ特異的なリピドーム変化は生じるが、齧歯類BPDモデルのメディエーターとして知られる新生仔期高濃度酸素がマウス肺で脂質プロファイルを変化させるかどうかはまだ分かっていない。この問いに答えるため、新生仔マウスを3日間高濃度酸素に暴露させ、肺胞化ステージのピークをまたぐタイムポイントである日齢7および日齢14までルームエア下で回復させた。5つの脂質カテゴリーと18の脂質サブクラスをカバーする液体クロマトグラフィー質量分析を用いて、2263の肺内の脂質種を検出した。最も高頻度に同定された脂質種はグリセロホスホ脂質で次にスフィンゴ脂質、グリセロ脂質だった。ルームエア下では、日齢7と比較して日齢14に一定のグリセロホスホ脂質とグリセロ脂質が増加した。日齢7に高濃度酸素は通常、グリセロホスホ脂質とスフィンゴ脂質、グリセロ脂質を増加させた。高濃度酸素はNADPHとアセチルCoA、クエン酸を増加させたが、カルニチンとアシル・カルニチンを減少させた。高濃度酸素は酸化型グルタチオンを増加させたが、カタラーゼを減少させた。これらの変化は日齢14でははっきりしなかった。高濃度酸素はドコサヘキサエン酸とアラキドン酸を日齢14に減少させたが日齢7では減少させなかった。まとめると、肺のリピドームは肺胞化の期間中に変化した。新生仔期高濃度酸素は肺のリピドームを変化させ、このことが肺胞単純化と血管発達調節障害の一因となっている可能性がある。

 

https://www.mdpi.com/2218-1989/10/9/340