研究部門

埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介083120

Front Immunol. 2020 Jul 28;11:1628. eCollection 2020.

 

Gestational Exposure to Cigarette Smoke Suppresses the Gasotransmitter H(2)S  Biogenesis and the Effects Are Transmitted Transgenerationally

 

論拠:妊娠中のたばこの煙(cigarette smokeCS)は肺の血管新生と肺胞化を障害し、世代を超えた喘息と気管支肺異形成症(bronchopulmonary dysplasiaBPD)の発症を促進させる。血管新生促進・肺胞化促進・抗喘息性ガス伝達物質である硫化水素(hydrogen sulfideH2S)は、cystathionine-γ-lyaseCSE)、cystathionine-β-synthaseCBS)、3-mercaptopyruvate sulfur transferase3MST)によって合成される。

目的:妊娠中のCS暴露が、マウス肺およびヒト胎盤において、H2S合成酵素発現に影響を及ぼすかどうかを検証する。

方法:マウスを妊娠期間中、妊娠中13時間たばこバーに座っている妊婦が受けるCS量と同等の受動CSsecondhand CSSS)に暴露させた。日齢7のコントロールおよびSS暴露新生仔の肺と妊娠中非喫煙または喫煙母体の胎盤の酵素発現を解析した。

測定:マウス肺とヒト胎盤のCSECBS3MSTの発現を、免疫組織化学染色、qRT-PCR、ウエスタンブロット(Western blotWB)で解析した。

結果:コントロールと比較して、妊娠中SSに暴露したマウス肺は有意にCSECBS3MSTの値が有意に低下した。さらに、SSによるF1肺でのCSEおよびCBSの抑制は、抑制の程度に有意な変化なくF2世代にも伝播した。これらの変化は、正常肺の血管新生と肺胞化に必須のプロセスである上皮-間葉移行(epithelial-mesenchymal transitionEMT)の障害と関連した。さらに、妊娠中に喫煙していた母の胎盤は有意に低いレベルのCSECBS3MSTを発現し、その影響は妊娠第1期に禁煙することで部分的に抑制された。

結論:肺H2S合成酵素は妊娠中のCSによってダウンレギュレートされ、その影響はF2世代に伝播する。妊娠中の喫煙はヒト胎盤でH2S合成酵素を減少させ、これは小児の喘息/BPDのリスク増加と関連しているかもしれない。

 

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2020.01628/full