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埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介090520

Oxid Med Cell Longev. 2020 Aug 7;2020:3840124. eCollection 2020.

 

Prevention of Oxygen-Induced Inflammatory Lung Injury by Caffeine in Neonatal Rats

 

背景:早産は未熟児無呼吸発作や気管支肺異形成症(bronchopulmonary dysplasiaBPD)等、多くの呼吸器疾患の要因となる。カフェインは無呼吸の治療として導入されたが、BPD発症率を減少させることも明らかになった。呼吸障害のある早産児の治療に酸素は必須であるが、高濃度酸素暴露はBPDを増悪させる。高濃度酸素新生仔ラットBPDモデルの肺組織における炎症反応と細胞死に対するカフェインの効果について検討することを本研究の目的とした。

方法:肺傷害は日齢3または日齢5までの80%酸素の高濃度酸素暴露により生じさせ、一部は日齢15までルームエアで回復させた。新生仔WistarラットにPBSまたはカフェイン(10 mg/kg)を出生日より2日おきに投与した。高濃度酸素による肺炎症反応に対するカフェインの効果は、酸素暴露後すぐの日齢3と日齢5、またはルームエア回復後の日齢15に、免疫組織学染色とELISAおよびqPCRによる肺ホモジネート解析により評価した。

結果:カフェインによる治療は高濃度酸素による細胞死およびアポトーシス関連因子の変化を有意に軽減させた。 無治療群と比較して、カフェイン治療群の高濃度酸素暴露肺組織では、炎症性メディエーターおよび酸化還元反応性転写因子であるNFκBを有意に減少させた。さらに、高濃度酸素下のカフェイン療法はアデノシン受容体(adenosine receptorAdora1の転写を調節した。カフェインは、肺のケモカインおよびサイトカインの転写を誘導し、肺胞マクロファージによる免疫細胞浸潤とアデノシン受容体(Adora12a2b)発現増加を生じさせた。

結論:炎症反応・肺内の細胞変性・アデノシン受容体発現調節に対するカフェインの影響について検討した本研究により、カフェインは実験的酸素誘導肺傷害に対して抗酸化・抗炎症薬剤として働くというエビデンスが明らかとなった。実験的研究により、BPD発症に関与する有害な機序の調節のためにカフェインを使用するという理解が広がるかもしれない。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7429812/