埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介121420
Stem
Cell Res Ther. 2020 Dec 9;11(1):525.
Paracrine
stimulation of perinatal lung functional and structural maturation by
mesenchymal stem cells
背景:間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSCs)は、早産で最もよく見られる続発症である気管支肺異形成症(bronchopulmonary dysplasia、BPD)等の呼吸器疾患モデルにおいて、新規治療法として期待されている。これらの研究では、細胞または動物を高濃度酸素または他の傷害誘導因子に暴露させている。しかし、未熟な胎児肺に対するMSCsの効果やMSCsは肺成熟を改善することができBPDの肺発達停止を軽減させる可能性についてはほとんど分かっていない。
方法:MSCsの条件培地(conditioned medium、CM)が機能的かつ構造的肺成熟を促すかどうか検討することを目的とした。機能的成熟を評価するため、初代胎児遠位肺上皮細胞(fetal distal lung epithelial cells、FDLE)のNa+輸送について、Ussingチャンバー内で検討した。Na+トランスポーターとサーファクタント蛋白のmRNA発現は、qRT-PCRで定量した。構造的成熟は、胎仔ラット肺移植片内を顕微鏡で評価した。
結果:MSC-CMは、上皮Na+チャンネル(epithelial Na+ channel、ENaC)とNa,K-ATPaseの活性を、それらのmRNA発現同様、強く増加させた。MSC-CMにより、胎仔肺移植片の分枝化と成長およびサーファクタント蛋白のmRNA発現が増強された。FDLE細胞の上皮完全性と代謝活性はMSC-CMの影響を受けなかった。MSCの作用は主にパラクリン・シグナルによるものであるため、目立った肺の成長因子はブロックされた。検討した成長因子(VEGF、BMP、PDGF、EGF、TGF-β、FGF、HGF)はどれも、MSCに誘導されたNa+輸送増加には寄与しなかった。一方で、PI3-K/AKTとRac1シグナルの阻害はMSC-CMの有効性を減少させ、MSC-CM誘導のNa+輸送において、これらのパスウェイが関与していることが示唆された。
結論:MSC-CMは胎児肺の機能的・構造的成熟を強く刺激することが結果として示された。これらの効果は少なくとも部分的にPI3-K/AKTとRac1シグナル・パスウェイにより仲介された。それゆえ、MSCsは有害な組織環境を修復させるだけでなく、肺の細胞の未熟性自身を標的にもする。
https://stemcellres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13287-020-02028-4?utm_source=other&utm_medium=other&utm_content=null&utm_campaign=BSCN_1_DD01_CN_bmcso_article_paid_XMOL