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埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介121820

PLoS One. 2020 Dec 10;15(12):e0243168.

 

Composition and origin of lung fluid proteome in premature infants and relationship to respiratory outcome

 

背景:超早産児は気管支肺異形成症と持続する肺疾患のハイリスクである。呼吸器予後の早期臨床バイオマーカーはなく、治療的介入も限られている。

目的:われわれは、①肺液蛋白の組成および起源の決定と、②呼吸器予後のバイオマーカー候補を明らかにするため、未熟児の気管吸引液(tracheal aspirateTA)と血漿の網羅的なプロテオミクスを行った。

方法:TAサンプルは、一酸化窒素療法の前後にTOLSURF研究コホート内の挿管された児から採取し、血漿はNO CLD研究の児から採取した。蛋白量はHPLC/タンデム質量分析計とProtein Prospectorソフトウェアで解析した。妊娠中期の胎児肺mRNA量はRNAシークエンスで解析した。呼吸器合併症は修正40週時と1歳時の換気補助の必要性と定義した。

結果:豊富なTA蛋白には、アルブミン、ヘモグロビン、アクチン関連蛋白が含まれた。検出された血漿蛋白137のうち96TA内に存在した(r = 0.69p<0.00001)。肺RNAseqデータによると、傷害された児の肺内で検出された蛋白の88%までが、細胞膜/分泌およびストレス/炎症のカテゴリーに多く含まれる形で、少なくとも一部は肺上皮由来であった。持続する呼吸器合併症ありまたはなしだった研究登録時(日齢7-14日)の児37人を比較すると、肺(例:アネキシンA5)と血清(例:ビタミンD結合蛋白)由来のバイオマーカー候補を同定した。特に、遊離ヘモグロビン値は呼吸器合併症児で2.9倍(p = 0.03)高かった。時系列研究では、ヘモグロビンは一酸化窒素療法開始と一致して、登録後にほとんどの児で著しく減少した。

結論:われわれは、肺上皮と血清は、肺傷害のある未熟児の肺液プロテオームに寄与すると結論付けた。共に酸化促進剤である遊離ヘモグロビンとヘムの生後早期の上昇は、一酸化窒素を枯渇・酸化/硝化ストレスを増加させることにより、持続する肺疾患の一因となっているかもしれない。

 

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0243168