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埼玉医科大学総合医療センター小児科 文献紹介010521

Am J Respir Cell Mol Biol. 2020 Dec 2. Online ahead of print.

 

Transforming Growth Factor Induced Protein Promotes NF-Kappa-B Mediated Angiogenesis During Postnatal Lung Development

 

肺の血管新生は肺胞化を促進させるための重要な要素である。われわれの以前の研究では、早期肺胞化においてnuclear factor kappa-BNFκB)が肺の血管新生を促進させることが示された。しかし、肺の脈管構造における時間特異的なNFκB活性化の調節機構については分かっていない。発達過程にある肺の脈管構造において血管新生性NFκBシグナルを活性化させる機序を解明することを目的とした。二次元分離ゲル電気泳動(two-dimensional difference gel electrophoresis2D-DIGE)を用いて肺のセクレトームのプロテオーム解析を行った。NFκB活性化と血管新生機能を初代肺血管内皮細胞(pulmonary endothelial cellsPEC)で評価し、transforming growth factor beta-induced proteinTGFBI)調節遺伝子はRNAシーケンスを用いて同定した。肺胞化と肺の血管新生はルームエアまたは高濃度酸素に暴露したWTおよびTgfbi欠損マウスで評価した。肺のTGFBI発現は、侵襲的および非侵襲的呼吸補助で補助された未熟仔ヒツジで確認した。初期肺胞からの分泌因子は、後期肺胞または成人肺では見られなかったが、静止期成人PECの増殖と遊走を促進させた。プロテオーム解析により、αvβ3インテグリンを介してNFκBを活性化することによりPECの遊走を促進させる初期肺胞付近で高発現する蛋白質の1つとしてTGFBIを同定した。RNAシーケンスにより、PEC内で一酸化窒素産生を促進させるTGFBI調節遺伝子としてCsf3を同定した。TGFBI欠損マウスにおいて、慢性高濃度酸素により生じる肺血管新生異常は増強され、肺胞化障害を示す未熟仔ヒツジにおいて、TGFBI発現は障害された。われわれの研究において、一酸化窒素産生促進により早期肺胞期にNFκBによる血管新生を促進させる発達調節蛋白質としてTGFBIが同定された。われわれは、TGFBI発現の調節障害が肺胞と血管発育の障害を特徴とする疾患に寄与している可能性があると推測した。

 

https://www.atsjournals.org/doi/10.1165/rcmb.2020-0153OC?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed